夕焼けの恋愛模様-2
そんな時、彼の噂を聞いた。
告白された、と。
今までだって何度も聞いたことはあったし、今までは何も感じなかった。
でも、今回は違った。
胸の奥底で、いつの間にか出来ていた真っ黒な塊が囁く。
彼の1番の仲良しは私。
あなた達が彼と付き合えるわけないでしょう。
そう、この長い時間で私の彼の想い、同情は他の何かに変わっていたのだ。
放課後。変わらず、夕焼けが包む屋上で彼と会話する。
「親指だけで逆立ちして?漫画でしてるの見たんだぁ」
「いや、折れるから。絶対」
彼との会話。いつも通りの会話。楽しくて面白い会話。
ふと、気付いた。
そうだ、きっとこの気持ちは独占欲なのだと。
欲しいおもちゃを買ってもらいたいような、自分の好きな食べ物を独り占めしたいような。
私は、この気持ちをそう決めつけてしまった。
屋上に私と彼以外の人間がいた。それは放課後、屋上で彼と話すのが日常化した頃。
彼は友達と言い、その人を紹介してきた。
その人は女の子だった。
私の目には、彼とその少女はとても仲良しに見えた。
もう見たくないと思った。私の前で話さないでと思った。
私は咄嗟に用事がある、と言い逃げだした。
ふと考える。
なぜ逃げたのだろうか。
独りだと思っていた彼に友達がいたので驚いた?
いや、何か違う。
考えても答えは出ない。でもただ、わかった。
私は1番になれないのだ、と。彼の周りには、やっぱり沢山の仲間や大切にしてくれる人がいたのだ、と。
私はそれから屋上に行かなくなった。
無意識に屋上へと足を向けていたこともあったが、無理やり我慢した。
多分、意地悪。
彼が友達と紹介した少女に呼び出された。
「どうして、彼に会いに行かないのですか?」
どこか怒っているようで、どこか悲しそうな表情だった。
私が言葉に困っていると、立て続けに言われた。
「彼はあなたが来なくなって寂しがってます」
「彼にとって、あなたはかけがえのない人なんです」
私は思い付いたがままに反論する。
「貴女がいるから大丈夫でしょう…」
彼女は、とても悲しい顔をした。
そして、呟くように言った。
「私で…は、ダメ…です…」
少女は逃げるように走り去った。彼女が隠そうとした涙が廊下に点々と落ちていた。