SLOW START \〜加藤さくら〜-5
「あっあっん!…い」
二人に限界が迫る。
トモは眉間に皺を寄せながら更に腰のスピードをあげる。
ぐちゃっぐちゅっずちゅ
いやらしい音に合わせて二人で昇る。
「あっあん!ぁあっダメイッちゃ…っんん!!」
先に限界に着いたのは私だった。
「っん!さくら!」
私の締め付けでトモも限界へ着く。
一気に欲望を引き抜くと私の太ももに全てを吐き出した。
トモは私に覆い被さり頭を撫でてくれた。
その重さと体温が堪らなく愛おしく涙が出た。
「さくら…愛してるよ…さくらだけ…ずっと。」
「…あたしも…ずっとトモを愛すから…約束して。側にいるって」
トモの指が涙を拭う。
視界がぼやけ滲み出し、トモが見えなくなる。
…いや、まだ…トモ…っ!!
「トモ!!」
目を開くと23歳の私が新しい部屋にいた。
…夢?…
トモは私が愛した最初で最後の人。
トモは…もういない。
…あたしの知ってるトモはあの日死んだんだ…
屋上で愛し合った日の帰り、トモは居眠り運転のトラックに轢かれ病院に運ばれた。
なんとか一命は取り留めたが頭を強く打ち記憶の一部を失った。
私との記憶だけを。
病室でトモが最初に口にした言葉は別れを意味していた。
「「…誰?」」
トモの中の私は死んだ。私の中のトモも死んだ。
それからトモは療養のため父親の田舎に引っ越したと聞いた。