SLOW START \〜加藤さくら〜-2
「いいパパになりなよ。」
私はそう言い寝室に向かう。
「さくら!ごめん!でも俺あいつの事なんとも思ってない!愛してるのはさくらだけなんだよ」
腹が立った。
相手の女はどうでもいい、ただ子供がいるのだ。
子供は一人では作れない。
二人でヤル事ヤッテんだから責任持てないならするんじゃない。
私は手が冷えていくのを感じた。
「黙れ。馬鹿男。てめぇ今日はここで寝ろ。」
そう言うと黙ったままうなだれた彼をあとに、私は寝室にいき浅い眠りについた。
朝、彼は休日出勤でいなかった。
私は荷物をまとめた。
いらないものはゴミ袋に投げ入れる。
ペアリング、プリクラ、写真、誕生日にもらった服…馬鹿男の匂いのするもの全部。
私は家を出た。
鍵をポストに入れ晶の家へ向かう。
1日だけ荷物を置いてもらうため。
そして連絡しておいた友達が勤める不動産屋に向かった。
すぐ入居出来る部屋を何部屋か調べておいてくれたのでさっそく見に行く。
三件目の三階角部屋、バス・トイレ別のワンルームが気に入り即決で決めた。
契約書にサインをして店を出る。
次は友達の働く電気屋だ。
家電をまとめて買い翌日配送を頼んだ。
少し安くしてくれた。
持つべきものは友達だ。
その後はカーテンやら掃除道具やら買い込み新しい部屋へ運び込んだ。
一旦、晶の部屋へ戻りその夜は泊めてもらった。
翌日、晶より早く起きると置き手紙を残し部屋を出た。
新しい部屋の扉を開くと中にはまだ何もなく、少しの寂しさと爽快感を感じた。
部屋の掃除を済ませカーテンを付け終わると、ちょうど業者が荷物を届けにきてくれた。
最後にベッドが届いて、なんとか部屋らしくなった。
時間はちょうど13時。
窓を開けると暖かい風が入ってきた。
私はベッドに寝転び一息ついた。
携帯を開くと彼から大量のメールがきていた。
帰ったら話し合おう、愛してる、ごめん、どこにいるの?連絡ちょうだい…うんざりだ。
さよならと送り、馬鹿男からのメールを消しアドレスを変えた。
馬鹿男以外にアドレス変更を知らせ携帯を放り投げた。