SLOW START [-3
「ん?どうしたの?」
私の冷たい右手はユウキ君の服の裾を掴んでいた。
自分でも解らない行動にただ俯いていた。
「…それは天然?」
ユウキ君が何か言った言葉は聞き取れず顔を上げた時、抱き締められた。
「ゆ、ユウキ君?!」
「ごめん。ちょっとだけ」
「…はい」
…暖かい
自然と目を閉じてユウキ君の肩に耳をくっつけて暖かさを感じた。
「そのまま…そのまま聞いて」
「…うん?」
「俺晶ちゃんが好きです。」
「……え」
「晶さんが好きです。良かったら彼女になって下さい。」
時間が止まったかと思った。
のどの奥が熱い。
体中の血が勢い良く巡りだした。
「ユウキ君…」
「やべ…言っちゃった」
ユウキ君は腕の力を抜き私をそっと離して続けた。
「今すぐ決めなくていいからさ。よく考えて」
「…わかった」
「じゃあ帰るわ。おやすみ」
「おやすみ…なさい」
ユウキ君は私の頭を軽く撫で駅に向かって歩いて行った。
部屋に戻るとコートを脱ぎスウェットに着替えてメイクを落とした。
…まだドキドキしてる
何をしてもユウキ君の匂い、体温、声…好きの言葉が離れない。
私の気持ちは…きっとユウキ君が好きなんだろう。
なのに何故か迷ってる。それは…田山拳だ。
ユウキ君はいつも優しい。私を一番に考えてくれる。
先輩は一緒にいて気を使わない。強引だけどたまに優しい。
どうしたらいいの…
人生で初めてのモテ期はまだまだ続き私を悩ませる。
つづく