SLOW START [-2
ボーリングを終えると大分お腹が減っていたので駅前で夕食を食べることにした。
イタリアン風の居酒屋だ。
全席個室になっていて落ち着いた雰囲気だ。
…先輩と行く居酒屋とは全然違うな
もはや先輩と較べるのも癖になっている自分がいやだ。
ユウキ君はビール、私は当然カシスオレンジを注文した。
女の子だからね。
お酒を軽く飲みながら自分の事、ユウキ君の事を話した。
ユウキ君と話していると飽きない。
ずっと笑っているから顔が疲れるくらいに。
時間は22時を少し過ぎていた。
明日が仕事だとは考えたくなかったがユウキ君も仕事だと言うので帰ることにした。
お店を出ると駅に向かった。
楽しかった時間が少しずつ終わりに近づいている事で私の口数は少なくなる。
ユウキ君は私を送ってくれるといい一緒の駅に降りた。
「ここから家まで結構近いよ」
「ユウキ君の家はふた駅先だっけ。近いね〜」
「うん。全然歩けるな」
何か話したくても寂しさが上回り返すのでやっとだった。
コンビニを過ぎるとあと200メートルほどしかない。
沈黙が続いてしまったので何か話し掛けようとした時、右手が暖かさに包まれた。
「寒いね〜晶ちゃん手つめたっ」
ユウキ君の左手が私の右手を包み込んでいた。
手は相変わらず冷たいのに、頬が一気に熱くなっていく。
「う、うん。末端冷え性なの」
「はは、末端なんだ」
心臓が動き出した事で体が暖まりだした。
なぜ急に手を繋いだのか…どうしたらいいのか…考えたが全く解らず、とりあえず動揺を隠すため平静を装って歩いた。
ハッと気がつくともう家の前だった 。
「ここ、家だよ」
「そっか到着〜」
…手離すタイミングがわからんてか…離したくない…
私はただ前を見て突っ立っていた。
「じゃあ…俺帰るね」
ユウキ君の手が離れると暖かかった右手が急に冷たくなった。