秋と春か夏か冬 番外編12、5話〜『2つの借り』〜-3
「うるせーーー!!!!」
教卓の前に立っていた秋津 恭介が怒鳴った。
辺りが静まる。
「ごちゃごちゃごちゃごちゃ、うるさい!
普段話さないヤツのことを、見た目や印象だけで不満言うのって、すげーカッコ悪いよ!別に北条院は何もしてねーだろ?
それにみんな覚えてないのか?北条院の100mのタイム。男子も含めてクラスで2番目なんだぜ?」
『言われてみれば…イメージだけで話したことないのに悪口言ってたかも…』
『確かにすごい速かったよね北条院さんって…』
周りの私に対する評価が変わる。
…なんなの?この秋津 恭介って男は…。
私が疑問に思っていると秋津 恭介がまた話しだす。
「俺と北条院が実行委員やるからには、絶対優勝するからな!
それにみんな聞け。優勝すれば打ち上げは先生のオゴリだってよ♪」
クラスが一気に盛り上がる。
「なっ、秋津!先生は何も言っとらんぞ」
当然うろたえる先生。
秋津 恭介が耳打ちでひっそりと話す。
「まぁまぁ、落ち着いてください先生。俺ら1年ですよ?2、3年生もいるのに勝てるはずないですよ……だから今は約束だけして、ヤル気にさせといた方が得策ですって♪」
先生を丸め込む恭介。もちろん恭介は優勝する気。
「そうか…よ、よしわかった。先生のオゴリだ」
「みんな聞いたか?クラス一丸になって優勝だぁ!」
クラスの盛り上がりはピークに達していた。
『北条院さん、頑張ろうね』
『運動神経良いもんね♪期待してるよ』
「…え、えぇ…」
周りの席の人が話しかけてくる。
私はぎこちなく返した。
…おかしい…なんであの男は、周りの空気を変えられるのだろう?
そして話したことない私のために怒ったの?
あとからあとから疑問が沸いてくる。
放課後…クラスで2人残って、作戦を立てながらメンバー表を埋める。
「あのさ、実行委員に指名したの…迷惑だった?」
ふいに秋津 恭介が聞いてくる。