biker's love☆2人の風-9
「車高を下げたいんだけどね」
私もバイクの話をする。
しばらくすると、慶くんが言った。
「すいませんが、お手洗い借りてもいいですかね?」
「あ、別によいよぉ」
ってことになって、家に上がることになった。
「あ、なんかあったかいもの飲んでく?コーヒーでもいれるよ。インスタントだけど」
「じゃ、お言葉に甘えて」
私はお湯を沸かして、コーヒーをいれた。
「桜さんの好きな人ってどんな人?」
慶くんに聞かれた。
ま、言ってもいいかな。
「バイトの後輩でさぁ、慶くんと同じ学年で、学科も一緒のコだよ。」
「えっ、じゃあ、もしかしたら知ってるかもじゃん。誰ですか??」
「知ってるかなぁ。籠屋(カゴヤ)ってやつ。彼女いるしさぁ、ダメダメだよ。ずっと、好きだったんだけどねー」
なんか、話してたら、悲しくなってきた。
気づいたら、私は泣いてた。
「ごめん、泣いたりして…」
その瞬間だった。
ぐいっ。
手を、引っ張られた。
次の瞬間には、私は、慶くんの腕の中にいた。
「辛かったんだね」
慶くんの腕の中が、心地よくて、優しくて。
私もギュッと、抱きしめ返していた。
しばらくして。
顔を上げた。
優しい表情をした慶くんの顔がすぐそばにあった。
ちゅっ。
優しいキスを一つ、くれた。
なんかどうしたらいいかわからなくて、私は俯いたままでいた。
「俺、帰りますね?大丈夫ですか?」
慶くんが、そう尋ねてきた。
私は、コクン、と頷くしかなかった。
慶くんを見送り、ドアを閉めた。