biker's love☆2人の風-8
「きゃっ」
足を滑らせてしまった。
「大丈夫?」
そう言って、慶くんは私の手を取ってくれた。
「ごめんなさい…」
「いや、ってか、桜さんの手めっちゃ冷たいし」
「ごめん冷え症でさ。」
恥ずかしいやらなんやら、慌てて手を離そうとした。
「俺の手、あったかいんで大丈夫ですよ」
そう言って、冷たい私の手を、ギュッと握ってくれていた…。
ドキドキ…。
「桜さんはぁ…」
突然、慶くんが口を開いた。
「彼氏とか、いないんですか?」
ドキっ。
「ずっといないよぉ、もう2年くらいかなぁ」
そう、私は、ずっと彼氏はいない。
大好きだった人はいたのだけど…
「好きな人には、彼女いてさぁ。フラれちゃったんだよねー」
2年間、ずっとその人が好きだった。
バイト先の1つ下の後輩で彼女のいる人だった。
彼の彼女は私と正反対で、小さくて、華奢で、大人しそうな、女のコらしいコ。
私は、小さいけど、部活やってるから、めっちゃ筋肉質だし、うるさいってよく言われるし、割合活発な人間だ。
ほんと、正反対。
でも、私ともよく遊んでくれた。
けど、やっぱ、彼女が大切だったみたい。
だから私は、彼の、そして彼の彼女の幸せのために、身をひくことにしたんだ。
こんなの、思い出したくないのに。
意地悪だ!
って知らないのだから、仕方ないのだけど。
「慶くんは?いないの?」
「いませんよぉ。」
そんなこんな言ってるうちに、アパートに着いた。
玄関の前には、私のバイク。
「やっぱり250の割りには大きいですよねー」
なんて、慶くんはバイクの話を始めた。