私の魔法使い-1
ドンッドンッ
初めて君を見たのは、薄暗いダンスステージ
体に心地良い重低音の波の中に私はいたんだ。
君はいつもツマラナそうにステージを見上げてたよね?
腕を組んじゃったりしてさ。
なんで踊らないの?って私が聴いたら
なんでかなって物憂げに言葉を濁して……
私の周りの友達は、キャーキャー言ってステージの上の男を品定め
でも私の目は……、何故だろう……君に釘付けだった
そんなある日、君は唐突にステージに上がったよね
覚えてる?
私の友達は、あんなに線が細いのに踊るなんて、って笑ってたけど
私は君の一つ一つの動きが全て計算されつくした動きに見えたよ?
それでね、実は私、曲が始まってからはあんまり覚えてないの…
だって、音が光のシャワーみたいに溢れている中を、君はイルカみたいに自由に踊るんだもの
体は細いのに、誰にも真似出来ないような重さ
猫みたいにしなやかで……
まるで魔法使いみたいに私を虜にしたよね。
ううん、私だけじゃない。
あの時、あの場所にいたみんなかな?
踊り終わった後、
君は真っ直ぐに私のとこにきたよね
なんで踊ったの?って聴いたら君は
私のことを魔法にかけたかったから…だって。
悔しいけどその通りになっちゃったね。
君は私の魔法使い。
でも嬉しいの。だってあの日、君と出逢った時から魔法が解けないから……
FIN