せかいいちしあわせなはなし-3
「わたしは本当にしあわせものです。お嬢さんのおかげです。でも、いちばんじゃありません。せかいいちのしあわせものは、あの子です。わたしはそう信じています。ですからわたしは、せかいでにばんめのしあわせものです。ありがとうございます。お嬢さんにもしあわせが、おとずれますように。」
さむい、さむい冬の夜のことでした。
しばらく降り続いた雪もすっかりやんだ細い道に、女の人の靴音がひびきます。
こつ、こつ。
女の人は、コートも、ショールも、てぶくろも、なんにも身につけていませんでしたが、その代わり、とても優しい笑みを口元にたたえておりました。
それはまるで、せかいでいちばんしあわせなひとのような、ほほえみでした。