極彩色-1
1627
自然と手が伸びその番号を選んでいた。
一年六組二十七番。砂埃で黄ばんだシール、上から三番目、ちょうど良い位置。
手は、げた箱からローファーを取り出した。
私は高校生なんだと思い出す。
野球部やテニス部の掛け声が聞こえる。
足は勝手に校門へと向かう。
今は放課後。そして私は帰るところ。
私は電車通学だ。
家は学校から十五分歩いた駅の三つ先。
校門を出て、その光景に息を飲んだ。
道路が極彩色で彩られている。
黄色、青色、ピンク色、緑色、オレンジ色‥‥
様々なビビッドカラーのペンキがあちこちに無造作に飛び散っていた。
視界の中で道路の占める面積は結構広い。
目が慣れなくてチカチカする。
角のコンビニを曲がって大通りに出た。
コンビニに寄りたい気もしたけれどやはり止めた。
私は優柔不断で買う物をなかなか選べない。その内に電車を逃してしまうだろう。
広い道路になると更に、色が増えたようだ。
小さい町だが、駅近くに来ると建物は多くなる。
そろそろ帰宅時間なのだろう、車も多くなってきた。
信号待ちしながら、なんとなく足下の水色を眺める。
そうだ、道路は以前からこうだった。
―――でも、何で?
無造作に蔓延る様に見えるペンキだが、気を付けて見ると多く使われている色があるようだ。
道路と道路の交差する所に色は集まる。
ややさびれた高層ビルの下に紫色の大きな、まるで花のような模様があった。
色の様子から最近出来たものだと分かる。
道の交わる所でも無く、道路でも無い。
歩道の真ん中に広がる紫色の花弁。
花芯に立ってビルを見上げる。
窓に反射して落ちかかる夕陽の光が反射する。
あぁ!
あぁ!
あぁ!
思い‥‥出した…‥。
コレは、血の痕だ。
ここで先月自殺があったじゃないか。
慌てて毒々しい紫から後ずさる。
花の色は血が流れた要因だ。何年前からだったろうか、一向に減らない流血事件や交通事故にこの政策がとられるようになったのは。
アスファルトに踊る鮮やか過ぎる色たち。
夕陽が世界を真っ赤に染め上げた。