僕らの日々は。〜甘い、甘い?〜-1
「――ごちそうさまでした」
とある学校。
「ふぃー、食った食ったぁ」
の、とある教室。
「お前ら、食うの速いよ」
……昼休み。
「沖春が食うの遅ぇんだって」
「そんなことないと思うけどな……」
「まぁ急ぐ必要もないんだけどな。ゆっくり食べろよ」
僕――沖田 春風は、ただいま食事中である。
僕の他に、二人の男子が机をくっつけて席を囲んでいる。
「そういえばよく噛んで時間かけて食べると満腹中枢ってトコが刺激されて、たくさん食べたような気になるらしいな」
「へー…。よく知ってるな、安良」
「ん、前『ある〇る』でやってたんだよ」
今、満腹中枢についての話をしてたのが深峰 安良(ふかみね やすら)。
「いくら噛んでも食べた量は変わんねーのにな。身体って結構アホなんだなぁ」
で、こっちの自分の身体をアホ呼ばわりしてるこいつが遊月 狭(ゆづき はざま)。
二人とも中学の頃からずっと同じクラスのプチ腐れ縁だ。
ちなみに僕は『沖春』と呼ばれていたりする。
「そういや明日だよなぁ」
安良が切り出す。
言わんとする事は分かる。
なぜなら今日は2月13日。
つまり、明日はバレンタインデー。
「……そうか、明日か…………」
「ん?どうした沖春。なんか憂鬱そうだな」
「どうせお前は篠宮からチョコ貰えるんじゃないのかよ?」
「あぁ。一葉はくれるって言ってた」
これは本当。
とりあえず貰えるのは確定している。
「ならいいじゃねーか。別に何も心配ねーじゃんよ?」
「いや、問題はそのときの会話でさ……」
▼▼
一週間前。
放課後、一葉と一緒に帰っていたときだった。
「ねぇ春風。ちょっと聞きたいんだけど」
「ん?何さ?」
「来週、バレンタインじゃない?」
……そういや、今年もそんな時期だっけ。
「あー、確かそうだったと思うけど」
「それでなんだけどさ、春風……」
一葉は真面目な顔をして、言った。
「――辛いのとすっぱいの、どっちが好き?」