「史乃」-5
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夕飯を終えたひととき。
寿明はダイニングでコーヒーを飲み、史乃はキッチンで食器を洗っている。
「史乃も飲まないか?」
寿明がコーヒーを勧める。史乃は洗い物をしながらチラリと振り返ると、
「私はいいわ。夜飲むと眠れなくなっちゃう」
「…そうか」
寿明はカップを傾けると、背を向けた史乃を見つめる。ヒザ丈のジーンズ。
しなやかそうな脚。丸く弾力感のありそうな締まった尻肉。細い腰。
(…何をしているんだオレは…)
舐めるように娘の身体を睨めつけ、興奮を覚える自分に嫌悪感を抱く寿明。
だが、彼の思いとは裏腹に、気がつけば目は史乃を追っていた。
洗い物を終えた史乃が振り返る。寿明は慌てて視線を外す。
「お父さん。お風呂先に入る?」
史乃の問いかけに、寿明はカップをソーサーに置くと、
「いや、先に入りなさい。明日も早いんだろう」
「じゃあ、先に入ろっかな」
史乃はそう言うと、ダイニングを後にする。残された寿明は、部屋続きのリビングに移動してテレビをつけた。
30分後。史乃がリビングに現れた。裸にバスタオルを巻きつけ、水滴をタオルで拭いながら。
「なんて恰好をしてるんだ」
顔をしかめる寿明。だが、史乃は臆した様子も無く、
「今日は特に暑いから、つい…」
そう言って冷蔵庫を開けて腰を曲げると中を物色する。バスタオルがせり上がり、桃のような尻が露になる。
それを見つめる寿明。
史乃は、冷えたお茶をグラスに注ぐと、一気に傾ける。アゴから喉にかかる曲面が静かに上下する。その姿は、ゾクゾクとした色気さえ感じさせた。
「早く寝間着を着なさい」
本心と真逆の言葉を口にする寿明。すると史乃はグラスの中身を飲み干すと微笑みながら、
「…別にいいじゃない。誰かに見られてるわけじゃないし」
その言葉に寿明は苦笑いを浮かべ、
「私が見てるじゃないか」
「…お父さんなら平気よ」
(…なに?)
史乃の言葉が続く。
「お父さんなら、裸を見られたって何とも思わないもん」
そう言って屈託の無い笑みを見せる史乃。
「屁理屈はいいから服を着なさい」
「は〜い」
史乃は生返事をすると、リビングから自室へと消えていった。
わずかに見えた史乃の白い尻肉が、いつまでも寿明の網膜の奥に残っていた。