「史乃」-18
ー終章ー
崩壊
僧侶による経文が流れる中、〈三宅家ノ墓〉と刻まれた墓碑の前に、参列する数々の人。
その中に、真田寿明、史乃の親子も並んでいた。
(早いものだ……あれからもう半年。来月には初盆か……)
墓碑を見つめる寿明は一種、感慨深い思いに駆られる。
そばに立つ史乃は葬儀の時と同様に、大人びた表情で静かに佇んでいた。
月命日が終わり、親族一同、近くの和食店で会食となった。
「史乃。どうだい?お父さんとの生活は」
会食が一段落した時、史乃の祖父母、綾乃の両親が訊いた。
祖父母にすれば孫娘が心配なのだろう。だが、史乃は祖父母ににっこりと笑い掛けると、
「楽しいわよ。学校と家の事で、毎日忙しいくらい」
史乃の答えに、祖父は少しがっかりした表情を見せ、
「…たまには、帰って来ないのか?」
史乃は祖父に明るい顔で、
「帰るわよ!来月にはお母さんの初盆でしょう。お父さんと一緒に来るわ」
「そうか!そうか!」
途端に祖父母は破顔して喜んだ。
「じゃあ、お爺ちゃん!お婆ちゃん!また来るから」
新幹線ホーム。祖父母は見送りに来ていた。
「まってるからね!」
祖母が悲し気な表情で乗降口前に立って、史乃に声を掛ける。史乃も〈すぐ来るから〉を繰り返す。
ゆっくりと扉が閉まり、〈ガコン〉と作動音がした後、滑るような動きで新幹線はホームを後にする。
祖父母は新幹線が見えなくなるまで、ホームに立ち尽した。