やっぱすっきゃねん!U…B-1
「あの…今日はちょっと用事があってさ。オレ、抜けるから」
給食後。直也はすまなそうに有理に話掛けた。いつもは佳代と2人、数学を教えてもらっているからだ。
「抜けるって、何処に…?」
「あの、ちょっと……」
有理の問いかけに、直也は曖昧に答えると教室の出口に向かう。
その姿を佳代が追っていくと、廊下に直也を待つ者がいた。
山下達也と橋本淳だ。
3人は固まって何かを打ち合わせると、やがて廊下を歩き出して佳代の視界から消えた。
「アッ!!」
頭にある事が浮かんだ佳代は、弾かれたバネのように席を立ちあがり、
「ゴメン!ユリちゃん。私も用事思い出した。明日にして!」
佳代は、両手を合わせて頭を下げると、直也達を追うように教室を飛び出した。
「…何なの?」
ひとり残された有理はポカンとした顔で、2人が消えた方向を眺めていた。
「じゃあ、まず2年から行くか。土田と菅野……」
「後は、6時限目の休み時間も使って1年を回るんだな?」
「そうだ」
山下が、部員名簿をチェックしながら直也と淳に伝えていた。
すると、
「ナオヤーー!!」
ひときわ高い声が廊下に響く。
直也は、背後から聞こえた声に顔をしかめる。
(…クソッ、ついて来やがった)
「説得に行くんでしょ?私も入れてよ」
参加を申し出る佳代に対し、達也と淳は驚いた様子で、
「…だってオマエ、勉強が忙しいからダメだって……」
「それ、いつ?」
「いつって、さっき直也が……」
みるみる顔色が変わった佳代。腕組みをして直也の前を遮るように立つと、
「何、自分勝手に決めてるの!!」
直也は苦笑いを浮かべ、
「イヤ、オマエは数学憶えるのが忙しいだろ?だから……」
「私より点数悪いヤツに言われたくないね!」
声を張り挙げ、思いっきり悪態をつく佳代。直也は怒り出したい心境をグッと堪え、
「…あまり大人数で行って事を荒立てるのは良くないだろ?だから、他の2年も呼んでねんだ」
(ヨシッ!説得力有る言い分だ。これでコイツも引っ込むだろう)
だが、直也の思惑は外れた。