やっぱすっきゃねん!U…B-4
保健室で、ユニフォームに着替える佳代の顔は暗かった。午後の休み時間を使っての説得が、全て徒労に終わったからだ。
佳代達は、戻って来れるよう何度も頼み込んだが、彼らは口を揃えて〈藤野コーチには付いて行けない〉と言われたのだ。
佳代にとってはショックだった。自分が敬愛してやまない藤野に対して、拒む部員がいた事に。
着替え終えて、グランドに向かう足取りが重いのは、練習がハードになっただけではなかった。
「澤田、遅いぞ!」
だが、永井より遅れて着いたため、キャプテン信也から怒号が飛んで来る。いつもなら列に駆け込んで行くのだが、そんな気持ちになれなかった。
「すいませんでした……」
トボトボと歩み寄り、消え入りそうな声で永井に頭を下げると、同じ足取りで列に加わった。
そんな佳代の変化が何故なのかを、永井は分かっていた。
だが、
「澤田!なんだその態度は?謝るならキチンとやれ!」
ビクッと反応する佳代。慌てて永井に駆け寄ると、いつものように声を張り上げ、深々と頭を下げる。
永井は表情を緩めると、優しく佳代に言った。
「オマエが休み時間に、何をやってたかは知ってる」
永井の言葉に、佳代は思わず下げてた頭を上げて永井を見た。その目は嬉しそうだ。
永井の言葉が続く。
「オマエ達の気持ち。オレは嬉しいぞ……」
そこまで言って永井の表情が変わった。先ほどまでの優しさは消え失せ、目は真剣に。
「だが、それと部活とは別だ。気持ちを切り替えろ」
佳代は永井の言葉を噛み締めながら、己の愚かさを反応すると、再び深く頭を下げた。
「…すいませんでした。自分の事しか考えてなかったです……」
永井は佳代を列に戻すと、練習前のミーティングを始めた。
「まず、来なくなった部員についてだが、本日、彼等の退部を受理した」
そこまで言った永井の顔は曇っていた。
「退部届けを受けての3日間。私も説得をしたが、彼等の気持ちに変化が見られなかった。
よって、彼等の退部を認める事にした」
永井はそこで一旦、話を切り、周りを見回すとハッキリと言った。
「今後、彼等が野球部と無関係になったからと言って、イジメ等に走らないように」
しばらくの沈黙。
そして、永井は話題をガラリと変えた。