やっぱすっきゃねん!U…B-3
「コイツって…まるで私をジャマ者みたいに…」
佳代は言い方に腹が立ち、直也に詰め寄る。が、信也が間に割って入ると、
「まてまて…だったら二手に分かれて説得に回ろう。澤田。オマエはオレと回ってくれ」
「私がですかぁ!!」
信也のアイデアに、さすがの佳代も驚いた。
「なにかマズイのか?」
「…いえ、そういう訳じゃ……」
信也の問いかけに佳代は首を横に振るが、実は彼の事を苦手に思っていた。
部活でも会話と言えば挨拶程度だけの上、何かにつけて彼に叱られていたからだ。頭ではキャプテンとしての行動だと分かっているが、心では納得出来ないでいた。
それに、
(こんなところをナオちゃんに見られでもしたら……)
だが、信也は笑みを佳代に見せると、意外な言葉を発した。
「じゃあ頼むぞ。オマエは1年生と練習してるから、彼等も本音を言いやすいだろ」
すると、佳代の表情がみるみる明るさを増した。
「ハイッ!」
大きく頷くと1歩、信也の前に歩み出る。
信也は〈ヨシッ!〉と言って直也を見ると、
「オマエ達は1-1から行ってくれ。オレ達は1-6から回るから」
信也の指示の元、5人は1年生部員の説得に当たるのだった。
ー放課後ー
代表電話を取った先生から、永井は呼ばれた。
「永井先生。藤野さんって方から電話です」
「藤野さんから?」
「そちらに回しますから」
目の前の電話が鳴り出す。永井が受話器を取ると、藤野の張りのある声が耳に響いた。
「…練習後に会えませんか?何処でも良いんですが」
藤野の焦りように、永井は不思議に思いながら、
「私は構いませんが、7時半過ぎになりますよ?」
「結構です。7時半に職員室に伺いますから」
それだけ言うと電話は切れた。
(昨日の今日で……いったい何なんだ…?)
受話器を戻しながら、永井は藤野の目的を考えていた。
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