彼女と手袋-1
俺の彼女は寒がりだ。
コートにマフラーは当たり前。
さらに耳当て、手袋…
この手袋が厄介物。
マフラーに顔を埋める仕草は可愛いし、耳当てだって小動物みたいで頭を撫でたくなる。
だけどこの手袋だけは許せない。
「早く帰ろう?」
完全防備で彼女は言う。
「雪の上わざわざ歩くなよ転ぶぞ。」
鼻唄なんか歌って話を聞いてない。
一人でどんどん進んでく。
「おい。おーい…。」
こっち向け
パシャッ
「あぁーっ!!やったなぁ!?えいっ!!」
「ぅわっ!??」
「もう一発っ!!」
それからしばらく童心にかえり雪合戦。
「はぁー楽しかったね。」
こっちは手が真っ赤でちっとも良くない。
でも君が笑えばそんなことはどうでもいい。
「はい。」
「え?」
「左手は貸してあげる。」
慌てて濡れて冷えた手を制服で拭く。
「右手はポッケにでも入れとけば?」
えっ?
普通、ここで右手はこっちとか言って手繋ぐんじゃねぇの?
「早くっ」
言われた通り手をポケットに突っ込む俺。
期待して馬鹿みてぇ…。
「耳当て貸してあげようか?真っ赤だよ?」
「いらねぇよ。」
「寒い訳じゃないもんね」
「うるせぇよ‥」
こんな寒い日でもいつだって君は温かい。
それに触れた俺の手は熱くなるばかり…。
〜fin〜