「姉妹隷嬢…京子の場合」-2
実行の日の朝、尚志はまずS・カンパニーから受け取った封筒を持ち、社長…富孝の元へ向かう。デスクを挟み、封筒を差し出すと富孝は手早く中身を確認し、
「よくやってくれた。日下君。これであの目狐に、一泡吹かせてやれる。ククク…。」
中身に目を遣りながら口元を弛ませる。
「では、後は木下課長を呼んで、手はず通りに。。社長の駒は所詮駒と、植え付けてやって下さい。」
子悪党の様な会話を軽く交わし、日下は別室に身を隠す。
ガチャ…
しばらくして、富孝から正面の扉が開き、黒い端正なスーツに身を包み、水色のブラウスの、二つ目まで開けた姿で京子が入って来る。
ツカツカツカ…
「お呼びでしょうか?…富孝社長。仕事がありますので、手短に。」
明らかに嫌悪の顔を浮かべながら、重厚な絨毯の中央に立ち、軽く富孝を見下す。
「まぁまぁ、そうツンケンしなさんな。ククク…。君が儂に興味が無い事は、もうわかっとるからな。」
ニヤニヤと、デスクに肘を着きながら顎を乗せる様に指を絡ませ、京子の様子を伺う。
「えぇ。あの話はもうお終いにしたはずですが?別に貴方のモノにならずとも、実力で上には行けますし。それで、何の用ですか?無いのでしたら、失礼しますよ。」
以前から言い寄られていた記憶を呼び戻され、さらに不快になっている京子に、尚志から受け取った封筒をデスクに突き出し、渡す。
ススッ…
「まぁ見たまえよ。ククク。君がまさか…こんな事をねぇ…ククク。」
はぁ…と京子は一息ため息をつきながら、デスクの封筒を取り、几帳面に中身を取り出し、中の写真を手に取る。
「何ですか?…写真…何の……!?」
写真に目が行くと同時に、一気に京子の顔が青ざめ、肩が小刻みに震えだし、冷や汗が頬を伝う。
「そういや、先日Sさんトコに行ってたねぇ?ククク。確か、商談が白紙になるとか何とかで。その時かな?大口だから仕方ないけど、まさか君がそんな事を…ククク。」
写真には…京子がS・カンパニーの社長に弄ばれる写真が写され、京子の露わな姿がいたる角度でさらけ出されていた。この数日間の不具合が一気に京子の頭で繋がり、怒りと悔しさと羞恥心で一杯になり、たまらず富孝を睨みつける。