壊れた美少女と幼き夢-4
「……分からない」
独り言のように呟く。
「でも、もし敵対したらきっと瞬殺されるだろうな…」
答えは結局でなかったが、それだけは分かった。
部室を出て、すぐに獲物を見つけた。
服装は青い制服に青い帽子。職業は、警察官。
手口は簡単だった。
警察官でも男に変わりはない。谷間を見せて誘惑して、外で二人っきりになれる場所にいこう、と言うと捜査網の穴に連れて行ってくれた。
そして、今に至る。
空は月と星が支配し、大地には静寂が舞い降り、私の足元は赤い血溜まりが世界を反射する。
トドメを刺す瞬間、男の最後の悪足掻きのような振り回した拳が当たった脇腹をさする。
「…まだ、足りないのね」
痛くはなかった。明日はアザになっているだろうが。
遠い昔、私は一度痛みを感じた……。
だから、私は治る。必ず治るわ。
そう、もっと人を殺せば。もっと沢山。もっと、もっと――
昔、痛みをくれた人間のような獲物を探さし、殺さなくては。
あの時、あの瞬間の痛みをもう一度味わうために。
私は目を閉じ、息絶えた男の真っ赤な血に染まったナイフを強く握る。
絶対的な絶望。
それは今でも、はっきりと覚えている。目を瞑れば、まぶたの裏に蘇る。
母さんのあの時の顔が。声が。言葉が。
足元にある人間の死体を見下ろす。
恐怖と痛みで歪んだ顔。永遠にもう動かなくなった身体。お化け屋敷にでもありそうな人形になった男。
でも、いつか…
少女は月が輝く空を見上げ、瞳に力強い光を灯す。
いつか、私が痛みを手に入れたら、母さんはまたいつかのように褒めてくれるだろうか…。
それはささやかな願望。
それは普通の人間への羨望。
それは当たり前の欲望。
それは幼き時に描いた希望。
他人を殺してでも。友達を裏切ってでも。自分がどうなってでも――
叶えたい夢のように思えた。