壊れた美少女と幼き夢-2
「愛君が部室で寝るなんて珍しいね…どうかしたのかい?」
「いえ、少し寝不足で…」
昨日、一晩中獲物を探していたためだった。ここ最近は、警察のこともありナイフの出番はめっきりなくなった。
「そうえば、ここ最近、警察がうろついてるね?」
「そうなんですか?」
「そう、固くなるなよ。おそらく君が目的かな?まぁ、証拠や目撃者もなしではもう時期引き上げるだろうがね」
「……部長、忠告しますが」
通称、部長。本名は棟方 紀伊奈。武器の売買をしている学校の先輩。チャームポイントは黒ぶち眼鏡。
愛のナイフもこの人から買ったものだった。信用はしていた。だか――
私は猫かぶりを捨てる。
「貴方には一応は信用してるけど、そこまで詮索される筋合いはないわ。不用意に関わるなら、容赦しないわよ」
年上の紀伊奈を睨めつけ、見せ付けるようにナイフを構える。
肩を震わせる部長だったが、冷静につむぐ。
「そう殺気立たないでくれ。これはただのお得意様へのサービスだよ。あと、ナイフを閉まってくれ。この状況で私を殺せば必ず捕まるよ」
「………」
確かその通りだった。
この状況では証拠が残りすぎる。寝起きで不機嫌になり、殺気立ちやすくなっている自分を諌める。
私はナイフをしまうと、黒ぶち眼鏡の少女は安心したように微笑する。
「ふぅ、やっぱり、愛君はとてもいいお客だ」
部長は、黒ぶち眼鏡を外し独り言のように呟く。
「これは私の身の上話なんだが、私の客はだいたいが壊れた人間が多い。知らず、聞かず、ただ自分の世界で生きている者逹ばかり。交渉中、ちょっとムカついただけで襲いかかってくる輩が多かった」
「さっきみたいに言っても絶対に止まらないしね…」と付け加え、部長は苦笑し、黒ぶち眼鏡を手で持て遊びながら話す。
「しかし、愛君は自らを律することが出来るし、常識もある。君は壊れたというより一種の才能に近いものかもしれないと思ってしまうよ」
微かに怒りが込み上げ、目付きが鋭くなる。愛の様子にも気付かず言い続ける紀伊奈。
「殺人の才能。まるで私の商売の才能と近いものを感じる」
前に1度、なぜこんなこと商売を、と聞いたことがあった。部長は薄ら笑いで「親の仕事は貿易関係でね。ただそれを真似てたら、いつの間にか、こうなってしまった」と言った。
おそらくそれも才能のおかげだろうか
いや、才能のせいで、か。
「辛いものだね、才能があるというのも」
あの時と同じ、薄ら笑いを浮かべ言う部長。
愛は怒りと共に思う。
もしこれが才能ならば私は1生涯このままなのか?
そんなことあるはずない。そうだ違う。私のは――