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冷たい情愛
【女性向け 官能小説】

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冷たい情愛10-5

「やってみましょうか」

彼は私の返事など無視するかの様に財布を取り出し、小銭を探している。
私は恋人でもない彼に、物欲しげな態度を取ってしまった事に焦りを覚えた。

若い子ならまだしも…30の自分がぬいぐるみに見入ってしまった事が恥ずかしくもあった。

ゲームが始まった。
彼は真剣にガラスケースを覗き込む。

「あ…っ」

ペンギンには引っかからず、彼は悔しそうな顔をする。
再び小銭を入れ、ゲームを繰り返す彼。

「遠藤さん…そんな…いいですから」

私は、真剣にゲームを続ける彼にそう言った。

「いえ…どうしても取りたいんです」

彼は何かにとりつかれた様に真剣にその行為を繰り返す。


「あっ」

カタンと、機械の下の方から音がした。
彼はゆっくり屈みこむと、手をのばし何かを掴んだ。

「ほら、取れました」

彼は笑顔で、私にそれを見せてくれた。

ペンギンのぬいぐるみ…

「ホントだ」

私は嬉しくなった。
ペンギンが好きだからではなくて…
彼が、笑顔で私にそれを差し出してくれた事が嬉しかった。

「貰っても、いいんですか?」

「勿論です。貴方に貰って欲しいんです」

彼は私の手のひらに、それをそっと乗せた。
少しだけ手が触れ合った。
年甲斐もなく、私の胸は騒ぎ始めた。

体はすでに繋がったことがあるのに、手が触れ合っただけで心が騒ぐ。

「設楽さん、今度はあのゲームやってみませんか?」

「はいっ」

私は、本当にゲームが苦手だ。
何度も何度も失敗ばかり…そんな私を、彼は笑っている。
私は悔しくなり、ヤケになり同じゲームを繰り返す。

「設楽さんて、リズム感無いんですね」

「そんな事ありませんっ!ちょっとタイミングがずれてるだけです!」

「それをリズム感がないと言うんですよ」

私がムキになればなるほど、彼の失笑をかってしまう。

「強がるのは昔からですね」

彼はずっと笑い続けている…もう恥ずかしくて仕方がない。
しかし…また彼は不可解な事を言った。

私は確かに昔から、負けず嫌いで男の人に食ってかかるところがあった。
でも…何故彼はそれを知っているのだろう。

考えてみれば…私のホクロの位置を知っていたのもおかしな話だ。
大学時代、恋愛関係でもないのに体を重ねてしまった人はいたが…
それはどれも友人関係である異性だったので、彼がその中に含まれていないのははっきりしていた。

今までの彼には、尋ねる事が出来なかったが…
今日の彼になら、聞けるような気がする。


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