冷たい情愛10-3
私は、なんだか…昔のようにはしゃいでみたくなったのだ。
心が軽い…仕事の事も忘れ、時間を気にせずはしゃぎたい。
幸い明日は日曜だ。
今夜帰らないと3日実家に帰らない事になる。
まあいいか…私も30歳…母親も今更心配しないだろう。
「遠藤さん、明日は何かご予定あるんですか?」
「いえ、特には…」
「なら、今夜付き合ってくれませんか?」
「ええ、設楽さんが大丈夫なら」
(良かった…今夜は思いっきりはしゃいでしまおう)
私はそう思った。
「ゲーセン…行きません?」
昨日の彼の誘いを断ってしまった事と、その時の彼の表情がどこかに引っかかっていた。
「嫌いなんじゃないですか?もしかして…昨日のことを気にしてるんですか?」
彼は私の意図をすぐに感じ取ったようだ。
「それもあるけど…行ってみたいんです。私ゲーム苦手だから、遠藤さん教えてくださいね」
私は笑顔でそう言った。別に無理やり作った顔ではなく…
本当に嬉しくなっていたのだ。
先生を好きになって良かった…
そして…辛かった心を、この人に吐き出せて良かった…
そんな人様の過去を、黙って聞いてくれるこの人がいてくれることが嬉しかった…
「私もだいぶ行っていないので…一応やってみますが、笑わないで下さいね」
遠藤さんが、ちょっと気まずそうに笑った。
(遠藤さんが笑ってる…)
私の実家の最寄り駅を過ぎる頃…
私と彼は、笑いあって会話をするようになっていた。
少し前までなら信じられない事だと思った。
仕事で出会ったこの人には、性的な興味があった。
彼の冷たい目を想って自慰が出来るほど私は乱れることが出来た。
それが今は…電車の隣に乗り、笑顔で話をしている。
好きなのかもしれないと感じた心は、本物だったのかもしれない。
私は…彼のことを…
本当に好きなのかもしれない。
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