冷たい情愛9(過去)修正版-5
「誕生日だな…おめでとう」
私は驚いた。先生が私の誕生日を知っている。
「先生、なんで知ってるんですか?」
「いや、生徒一覧のデータで見たから」
「先生は、全員のデータを見てるんですか?」
先生は珍しく大笑いをした。
「バカか、んな訳ないだろう…お前のだけだ」
普段冷静な彼が、笑っている。
その笑顔を見れて、私は嬉しくなった。
「うん、16歳になっちゃいました」
「だな〜、設楽ももう大人だな、結婚できるぞ」
神崎が私を冷やかす。
「相手いません…それに私…結婚には興味ありません」
「今からそんなこと言ってるのか?女の子は憧れるもんだろ〜」
私は実際、恋愛・結婚願望がなかった。
「じゃあ、お前は将来どうしたいんだ?」
神崎は、優しい顔で言った。
「私、男の人みたいにバリバリ働きたいんです」
「ほほ〜、なかなか立派だ」
そんな会話…
ドキドキする…
先生が…私のためだけに笑ってる…
「私…でも…先生のお嫁さんなら、結婚してもいいかも…」
(あたし、なんて事言ってんの!?)
「設楽…そうだなあ、お前みたいな女性を妻にしたら、俺はさぞかし幸せだろうな」
笑顔で、でも寂しそうに彼は言った。
以前と同じ…寂しそうな目…。
「そうですよ、もう結婚できますっ!」私はむきになって言った。
神崎は、私の頬を撫でる。心臓が飛び出す位ドキドキする。
「君ならなれるさ」
神崎の言葉に、私は驚いた。
「努力するんだ、君が卒業するまで…私も教師でいる…
私が持つ知識などたいした物ではないが…してやれることは何でもしてやる…」
その日から、私と神崎は、生徒と教師としてではなく…
先を行く人と、追う人になった。