冷たい情愛9(過去)修正版-15
「今日はどうしたんだ?」
「ええ…人の付き添いで近くまできたので…」
「今日な、笠原智子も来てるんだぞ」
山本は、熱心に指導した陸上部の教え子…笠原智子に会えた事が嬉しかったし、
そのすぐ後、また偶然にこの教え子にも会えた事が嬉しかった。
「向こうは私のことを覚えてないんじゃないでしょうか」
「ん?同級じゃなかったか?」
「いや…笠原先輩より2歳下ですよ」
「いくつになった?」
「28になりました」
「そんな歳になったのかあ…」
山本は、過ぎ去った年月を感じた。
過去、若く情熱に溢れていた自分…
そんな自分と同じ教壇に経ち、一人の生徒と愛し合った同僚であり友だった男…
必死に学び、必死に男に追いつこうと幼い体を開いた生徒…
そんな大人になっていく友の傍で、いつも楽しそうに過ごしていた生徒…
昔から寡黙で、今では精悍で冷静な大人に成長した生徒…
山本は土手に立ち、かつての教え子と空を見上げた。
そこにはただ…
青い空が広がっていた。
たくさんの人たちの人生の上に過去も今も未来も…常にあり続ける…
そんな青く広い空が広がっていた。