冷たい情愛9(過去)修正版-13
「奴の結婚式でな…母親は本当に嬉しそうな顔だったんだ」
私は、会った事のない彼の母親の姿を思った。
「それまではお前の事が本気で好きなら親兄弟を捨てれるだろうとも思ったが…
あの母親の顔を見たら…俺も、あいつの選択は仕方なかったんだなと分かったんだ」
先生は、ゆっくりと話を続けた。
「しかし…お前の中には、まだ奴がいる…それが愛情なのか恨みなのかは分からんが…」
「だからな…」
私は息を飲んだ。
「あいつの本当を、知って欲しいと思ったんだ…」
本当の…
「あいつは…お前の向上心に…賭けたんだ…」
賭けた…
「あの時のあいつは…そうするしか出来なかったんだ」
声が出ない…
「お前には、望む将来を自由に進んで欲しかったんだろうなあ…」
涙が溢れた。
何も言えなかった。
私は幼かった。
何も分からなかった。
18の私には…何もしてあげられなかった。
あの人は…
私を捨てたわけじゃなかった…
人生のたった三年間…
その時間、彼は私に全てを教えてくれたんだ…
好きだった…
大好きだった…
忘れられるわけが無かった…
幼いなりに、一生懸命だった…
幼いなりに、愛していた…
彼が与えてくれたものは…
大きすぎて、私の全てを構成していて…
私は彼がいなければ…
今歩く道を、生きてはゆけなかった…
今の私…それは決して自分だけで得たものではなかった。