ヒトナツC-6
「ただいま」
二人して家にあがる。
「……」
「えらい緊張してるね」
「だ、だって……」
桜は桜でなにか思うことがあるのだろう。
「先に俺の部屋行く?片付けてないから汚いけど」
「あ、うん、でも……ちょっとおトイレ借りていいかな」
「はは…じゃあ、俺の部屋二階の奥だから。先行って少し片付けてる。トイレそこだから」
「…はい」
桜はマジで緊張してんな。
階段を上りながら考える。
だがな……
この状況で俺のが緊張しないわけねえええええ!
桜を家に呼ぶだけでも緊張するのに!
渚と三者面談なんて何も起きないわけねーだろおおお!
俺自身、すんげえ動揺してきた。
そんなとき、いやな予感が激しく的中。
「きゃああああああああ!」
「ぎゃああああああああ!」
「………はあ」
***
あの悲鳴はどうやら、桜と渚がいきなりトイレで鉢合わせしたためらしい。
渚はたまにトイレの鍵かけてないからな…
人んちでトイレ開けたら人がいたなんて、そりゃあ大声出すわな。
で。
「………」
「………」
「………」
只今、三人でテーブルを囲んでいるわけで。
異様に気まずい雰囲気が漂っております。
「さ、さっきはごめんなさいね」
渚は苦笑いする。
「あ、いえ」
桜も苦笑いで返す。
「まさか健吾の彼女がいきなり来るなんて思わないし、油断してたわ」
渚はチッ、なんて舌打ちしながら俺に鋭い視線を向ける。
「いやいや、普段から鍵閉めれや」
俺はお決まりのツッコミ役。
「………」
「………」
「………」
空気おもてええええええ!
激しく逃げたいです。
「……あ、自己紹介しないとね。」
渚はそう言った。
こう見えて渚は引っ張るのが得意なのか?とてもリーダーシップがあるようには思えんが。
いや、リーダーシップというより尻に敷く力か?
「渚よ。よろしくね。健ちゃんとは小さい頃からの幼なじみなの。ね、健ちゃん」
チラリとこちらを伺う渚。
「健ちゃん?」
怪訝な顔でこちらを伺う桜。
まあ、たしかに渚には“健ちゃん”と呼ばれていたが……
まさかこいつ……
桜に敵対心燃やしてやがるううううう!?