ヒトナツC-3
「はっ、はっ」
駅まで全力疾走。
素早くタクシーに飛び込む。
電車は時間がわからない。
なによりのんびりしている暇はないのだ。
「ここまでお願いします」
携帯のメモリから桜のデータを引っ張り出して、住所を見せる。
「待ってろよ」
三十分ほどタクシーに揺られ、桜の自宅前に到着した。
料金を払い、なぜかタクシーが走り出すのを見送った。
「っし」
チャイムを押す。
「……?」
誰もでない。
もう一度。
「……」
嘘だろおおおお!
ここじゃないのかよ…
大学?
遊園地?
わっかんねー…
携帯を取り出し、桜にかけようとする。
だがまたも躊躇う。
桜は悩んでいるんだ。
やっぱ自分で見つけなきゃ。
俺は駅まで走った。
もうすんげえダッシュで。
***
「あ」
いた。
駅の反対側のホームに立っている桜。
「すげー悲しい顔……」
桜は俯き、いかにも飛び降りてやろうかって顔をしている。
幸い、ホームに人は少ないし、ためらうな俺。
「桜!!」
うわー、めっちゃ人がこっち見てる。
でも、桜も見ている。
「ごめん!」
俺がそう叫ぶと、桜は目を見開いた。
「彼女の…ことを謝ってるんですか?」
桜も叫ぶ。
ん?
彼女?