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『サクラ・桜』
【悲恋 恋愛小説】

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『サクラ・桜』-4

 次の日、彼女はもう居なかった。

 桜の花びらは、もう殆どが散っていて、すでに生気を無くし、あとは最期を待つのみとなった哀れな何枚かが、仕方なさそうにぶらさがっているだけだった。

僕はしばらくそれをじっと眺めていた。

『…桜は散って、春は終わるの。』

彼女の言葉が頭の奥のほうで響いた。


『こんにちは。』


『ねえ、ハルくん。』


『…ハルくん、ね。いい名前ね。』


『サクラって呼んで。』


『私も好きよ。』


『ねえハルくん。』


『サヨナラ…。』


 頬をつたう悲しみをぬぐうこともせずに僕はただじっと桜を見ていた。

 それは弔いだった。いつかにこの世を去った、会ったことも無い、名も知らぬ、愛しいヒトへの…。


風が、強く吹いた。何枚かの花びらが風に舞った。


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