忘れてしまった君の詩・2〜第一章〜-6
「――ってことで、以上だ。質問はないな?」
まるで念を押すかのような断言口調。
そんな風に訊かれて、いったい誰が彼女の邪魔をできようものか。
息を飲む音さえ響きそうなほど、静まり返るクラス一同。それに満足そうに頷いて、
「よろしい。では、今日も一日頑張ってくれ」
右手をひらひら、来たとき同様のやる気のなさでご退出あそばせる、皇帝陛下。
いったい何しにきたんだろうね、彼女は? なんて、思わず首を傾げようというもの。
そんなわけで実りのない朝のホームルームは終了、教室に活気が戻る。
この頃になると、僕の手紙に対しての疑問はずいぶんと小さいものになっていた。
わからないものをいつまで考えていてもしょうがない。
それに放課後になれば、いやでもわかるに違いないし、もしかしたら僕の勘違いということもある、ってね?
まあ、今から思えば、そんな風に軽く考えていたのが悪かったんだろう。
もう少し、危機感を持って熟慮しておれば、この後の災難を回避することができたかもしれないのだから。
でも、今更そんなことを言っても後の祭り、後悔先に立たずってやつである。
呪うとしたら、予知能力を持たぬ凡人として生まれてきた僕自身か、これまでそういった知人に巡り会えなかった己の不運を呪うしかない。
つまりはどういうことかというと……、
――人生とはかくも残酷なものなのである。