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忘れてしまった君の詩
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忘れてしまった君の詩・2〜第一章〜-5

『クラスで一番偉い自分より後で来るなど言語道断。傲慢もいいところだ』

というのが彼女の言い分。理不尽なこと、この上ない。

 だが、その取り決めのおかげで、遅刻者数は全学年合わせてもウチのクラスが群を抜いて少ないとあっては、僕らに刃向かう余地はないのであった。

 ダッシュの甲斐あって、辿り着いた教室に英里先生の姿はない。

 これには僕も、

「ふぅー」

と、思わず安堵のため息。

せっかく余裕を持って登校してきているのに遅刻扱いなんて、ご免こうむるというもの。

一通り、クラスメイトに挨拶を交わしてから席に落ち着くと、始業を告げるチャイムが鳴った。

 それとほぼ同時、まるで計ったかのように教室のドアが開いて、

「おはよう。ホームルームを始めるぞ」

愛想もそっけもない挨拶と共に我らが麗しき皇帝陛下、柳原英里先生がご登場あそばせた。

教壇に立った今日の先生は、紺のジャケットに同じ色のタイトなミニスカートという出立ち。

知的な風貌と相まって、公立高校の教師というよりはどこぞの会長秘書とでも紹介した方がしっくりきそう。

 ご丁寧なことにピンホールのハイヒールまで履いておられる。ふむ。

「これで眼鏡さえあれば完璧なんだけど……」

「何か言ったか、竜堂?」

小声で呟いた筈なのに、先生にはバッチリ聞こえていたみたい。

おっとろしい地獄耳。

「いえ、何でも……」

「なら静かにしていろ。今日の予定を伝えるから」

迫力ある目で睨まれて、僕は了解の意を込めて両手を上げた。

どうやら、あまりご機嫌麗しくない様子。

多分、ここのところ続いている短縮日程に、ほとほと嫌気がさしておる為ではなかろうか。

彼女のことだ。教師という立場にありながら、きっと腹の中では、

「やることがないならさっさと休みにしろ」

ぐらいのことは、平気で考えているに違いない。

何でそんなことがわかるのかって?

今日の予定とやらを説明する彼女の顔に、デカデカとそう書かれていたからである。


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