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忘れてしまった君の詩
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忘れてしまった君の詩・2〜第一章〜-2

「そういえば、龍麻。この間のアレはどないしたんや?」

「アレ?」

「バスケ部の話。お前、六月の球技大会からこっち、えらい勧誘を受けてるやろ」

「ああ……」

勇介の言葉に、僕の意識は約一ヵ月前へと立ち返る。

中間試験の終了にあわせて催された球技大会。

男子はバスケ、女子はソフトボールだったのだけれども、その大会で僕はクラスが準優勝する原動力になったのだった。

が、それがまずかった。

何の部活にも属していない僕の活躍に、バスケ部顧問が目を付けたのである。

それからというもの彼の者の押しは熾烈を極めた。本人は許よりバスケ部幹部、末端部員に至るまでの勧誘の嵐は、夏休みを目前に控えた今になっても治まりをみせていない。

 それと、もう一つ。

 実は時を同じくして始まった懸案事項もあったりするのだが、それはそれ。

 複雑にして難解、デリケートな問題のため、仲の良いこのふたりにすら話してはいないことだったりする。

「たしか、ウチのバスケ部って都大会の強豪でしたよね?」

香織ちゃんの質問に、勇介は即座に頷いてみせた。

「そうや。去年の夏の大会では、全国まで今一歩のところまでいったんや。まっ、結局はベスト4を決める試合でコテンパンにされてしもうたんやけどな」

さすがは校内きっての情報通にしてエセ関西人。

 試合のスコアまでも答えてみせる。

それによると、どうやらダブルスコアに近い惨敗だったらしい。完膚なきまでとはまさにこのこと。

「今年はエースやった三年をはじめ、レギュラークラスが二人も抜けてもうたからな。監督としては何が何でも、その穴を埋めたいんやろうな」

「それでお兄ちゃんに白羽の矢が立ったと?」

「まっ、そういうこっちゃな」

まったく、迷惑な矢も当たったもんだ。

 ――自分で育ててきた選手がそんなに信用できんのかね。嘆かわしい。

 深く深く、ため息を吐く。と、不意にあることを思い出して、僕は言ってみた。

「そういうお前はどうなんだよ、勇介」

「ワイか?」

「そうだよ。この間の大会、ウチのクラスと準決勝で当たったのはお前のとこのクラスだったじゃないか」

そう。僕のクラスと勇介のクラスは、準決勝という舞台で相間見えていたのである。

その時、こいつはバスケ部員も顔負け、ド派手なダンクシュートを決めたりして、僕らを最後の最後まで苦しめてくれたのだった。


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