明日への扉-6
いつもより早い時刻にデパートを後にした真希。
その表情は冴えない。
先ほど通じた想いがそうさせていた。彼女は心からミルと過ごしたいと思ったが、それが叶わぬ願いと分かったからだ。
真希が住むマンションは、ペットを飼うのを禁止していた。
仮に飼えたとしても、10万円という金額は高校生の彼女にとって高額過ぎる。
ミルを見ていられるのも、あと2週間位だろう。そう思うと、悲しみがこみ上げた。
トボトボと重い足取りで学校にたどり着き、教室に現れた真希。
「…すいません。遅くなりました……」
閉じた扉をそっと開けて中に入ると、先生をはじめ教室中の視線が彼女に集まる。
真希は、誰とも視線を合わせず俯いたまま先生に近づく。
「…もう良いのか?」
先生は、気遣いとも諦めとも取れる表情で彼女に訊いた。
すると真希は、俯いた顔で小さく頷くと、
「…はい……」
消えそうな声で答え、自分の席に歩いて行く。周りの視線は真希を追っている。
視線に義之の顔が入る。その目をまともに見れない真希は、一層俯くと席に着いてバッグから教科書を取り出す。
授業が再開され、先生の声が教室を支配する。
その時、
「どうしたんだ?」
義之が真希に呟いた。
だが、彼女は俯いたまま答えなかった。
ー昼休みー
真希はいつものように、仲良しグループと一緒に弁当を食べようとした時、
「相沢。ちょっと付き合え」
義之が止める。
真希は黙ってついて行った。約束を破った件で、後めたさもあったのだろう。
「ここなら良いな」
そこは屋上だった。
義之は風の当たらない場所にしゃがむと、弁当を展げる。
「ホラッ、オマエも座れよ」
義之が座るよう促すと、真希はそばに腰掛けた。
「ホラッ、これ…」
義之が、来る途中で買ったお茶を真希に渡す。
「…ありがと……」
小さな声で、お礼を言う真希。