投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

明日への扉
【その他 恋愛小説】

明日への扉の最初へ 明日への扉 12 明日への扉 14 明日への扉の最後へ

明日への扉-13

2階のエレベーターホールに着いてボタンを押す真希。だが、なかなかエレベーターが動かない。
彼女は、もどかしいとでも言いたげに、エレベーターホールとなりにある階段を駆け上がる。

(ミルに会える、ミルに会える)

そう思いながら階段を蹴り上げる。

「…ハァ、ハァ、ハァ…」

数分後、よろけながら屋上に上がり着いた真希は、いつもは立ち留まる遊戯場跡を重い足取りで通り抜け、ペットショップの方へと向かう。

角を折れる。ペットショップの看板が目に入る。自然に顔がほころぶ真希。

いつもミルが入るケージを見つめた。が、そこにミルの姿は無かった。

(…あれっ?ミル)

そこに居たのは白い豆柴でなく、茶色のトイプードルだった。

(…ミル…ミル…)

真希は焦るように、他のケージをひとつ々探していく。だが、何処にも白い豆柴はいなかった。

不安気な表情で店のドアーを潜ると、真希は店員に訊いた。

「…あの、ミル…白い豆柴は?昨日までいた豆柴はどうしたんですか?」

真希の表情を見た店員は、少し驚きながらも、

「…あ、ああ、あのコね。昨日、売れちゃって……」

「…それ、どんな人でした?」

真希の質問に、店員は両手を身体に巻き付け俯き加減に思い出しながら、

「アナタと同じ位の高校生だったわ。閉店前に来て迷わず〈コイツを下さい〉って……」

「…そうですか……」

真希は店員にお礼を言うと、トボトボとペットショップを後にした。
デパートを出て俯いて駅へ向かいながら、

(…ミルは何処かの場所で生きてるんだ。飼われて幸せに。…もし、あのまま誰かに飼われなければ……)

ペットショップで売れ残った仔犬がどうなるのか、おおよその見当ぐらい真希にも分かる。
突然の別れは悲しいが、ミルがこの先、元気に生きていればそれで良いと真希は考えてた。



最寄りの駅を降りて、自宅へ歩いて行く真希。その顔に笑顔は無いが辛さも無い。

自宅そばの公園の中を歩いて行く。登下校時などには利用しないのだが、自宅への近道として昼間は通っている。
冷たい風が吹いているためか、公園にはほとんど人影は無かった。
真希は広場を過ぎると、木々に囲まれた道に入ろうとした時、


キャン!キャン!キャン!


突然、犬の鳴き声が近づいて来る。真希は思わず身構えた。


明日への扉の最初へ 明日への扉 12 明日への扉 14 明日への扉の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前