明日への扉-13
2階のエレベーターホールに着いてボタンを押す真希。だが、なかなかエレベーターが動かない。
彼女は、もどかしいとでも言いたげに、エレベーターホールとなりにある階段を駆け上がる。
(ミルに会える、ミルに会える)
そう思いながら階段を蹴り上げる。
「…ハァ、ハァ、ハァ…」
数分後、よろけながら屋上に上がり着いた真希は、いつもは立ち留まる遊戯場跡を重い足取りで通り抜け、ペットショップの方へと向かう。
角を折れる。ペットショップの看板が目に入る。自然に顔がほころぶ真希。
いつもミルが入るケージを見つめた。が、そこにミルの姿は無かった。
(…あれっ?ミル)
そこに居たのは白い豆柴でなく、茶色のトイプードルだった。
(…ミル…ミル…)
真希は焦るように、他のケージをひとつ々探していく。だが、何処にも白い豆柴はいなかった。
不安気な表情で店のドアーを潜ると、真希は店員に訊いた。
「…あの、ミル…白い豆柴は?昨日までいた豆柴はどうしたんですか?」
真希の表情を見た店員は、少し驚きながらも、
「…あ、ああ、あのコね。昨日、売れちゃって……」
「…それ、どんな人でした?」
真希の質問に、店員は両手を身体に巻き付け俯き加減に思い出しながら、
「アナタと同じ位の高校生だったわ。閉店前に来て迷わず〈コイツを下さい〉って……」
「…そうですか……」
真希は店員にお礼を言うと、トボトボとペットショップを後にした。
デパートを出て俯いて駅へ向かいながら、
(…ミルは何処かの場所で生きてるんだ。飼われて幸せに。…もし、あのまま誰かに飼われなければ……)
ペットショップで売れ残った仔犬がどうなるのか、おおよその見当ぐらい真希にも分かる。
突然の別れは悲しいが、ミルがこの先、元気に生きていればそれで良いと真希は考えてた。
最寄りの駅を降りて、自宅へ歩いて行く真希。その顔に笑顔は無いが辛さも無い。
自宅そばの公園の中を歩いて行く。登下校時などには利用しないのだが、自宅への近道として昼間は通っている。
冷たい風が吹いているためか、公園にはほとんど人影は無かった。
真希は広場を過ぎると、木々に囲まれた道に入ろうとした時、
キャン!キャン!キャン!
突然、犬の鳴き声が近づいて来る。真希は思わず身構えた。