冬空〜完〜-1
あれから一年近く経つ…
今住んでる街はちゃんと雪が積もる…
新しい街に慣れてきた…
旦那は…元旦那はと言った方がいいのだろう…
理由も言わないでただ別れて欲しいと繰り返す私に痺れをきらして先月やっと判を押してくれた…
すっきりしたという想いはなかった…
あるのは終わったんだという脱力感だけだった…
許してもらおうなんてこれっぽっちも思わない…ううん…思えない…
私の勝手で子供達を片親にした…
でも母親が幸せじゃなかったら子供達も…何て理由をつけてもやっぱり心が納得出来ない…
結局私は何がしたかったのだろう…
元の旦那から逃げたかっただけなのかもしれない…
ううん…平凡な生活から逃げたかっただけなのかもしれない…
でも彼を想い出さない日なんて一日もなかった…
運命(さだめ)なんてものがあるならそれは何て残酷で意地悪なんだろう…
一年後にここで…
彼の言葉が私の心にリピートする…
指折り数えてる私がいる…
だけど私は…行かない…
好きだから…行かない…
こんな恋愛があってもいいだろう…
… 悲恋 …
約束の日私はきっと悲劇のヒロインになって溢れる涙も止めずにいるだろう…
これで…良かったんだ…と繰り返しながら…
彼との三年は私に残りの何十年を生きるに値する日々だった…
頑張れる…想い出だけで生きていける…
前を向いて自分の足で…
きっともう人を愛する事などないだろう…
心に鍵をかけた…
約束の日から何日か経った後…
仕事を終えて子供達の待つアパートへ急いでいた…
雪が舞い落ちてきて…
『今夜は積もるかな…』
私は彼と会ってから雪が大好きになった…
あの人の全てを想い出させてくれる雪が大好きだ…
辛かった想い出も楽しかった想い出も全部包んでくれる雪が大好き…
帰り路を急ぎながら走馬灯の様に想い出す…
家について玄関の鍵を開けようとした時…
聞き覚えがある声が聞こえた…
子供達の笑い声と一緒に…勢いよく玄関を開けると…『お帰りなさ〜い。ママ』下の子が抱きつく様に飛んできた…
『お帰り…雪が降ってるよ…寒かっただろう…』
懐かしい彼の声…
『おじちゃんが寒そうにママを待ってから上がってもらったの…』
娘がちょっと誇らしげに言った…
『どうしたの…ママ』
私は溢れる涙を拭おうともせず…
彼の胸に…飛込んだ…
これから大変な事が沢山あるだろう…
泣く事も辛い事も沢山あるだろう…
だけどもう…離さない…
〜 完 〜