冬空〜第四章〜-1
あの日から冬空が続いてる
毎日の生活に追われながら私は帰りに必ずあの喫茶店で彼を探す…
曇ったガラスを横目に見ながらわざとゆっくり歩いては彼の姿を探す…
もう会えないかもしれないと思うと胸の奥がちょっとだけキリキリし出す…
あれから二週間位経った日に彼の姿をあの喫茶店で見つけた…
私ははやる気持ちを押さえながら静かにドアを開けた…
窓の外を見つめる彼の横顔を見つめながらそっと前に座る…
びっくりした様な彼の顔…私は静かに微笑みながら 『お待たせ…』
とだけ言った…
どちらから誘ったのかは覚えていない…
私達は薄暗い部屋で抱き合っていた…
『君を見た時は時間が昔に還ったかと思ったよ…』
『会いたかったの…ただそれだけ…』
自分が母である事も妻である事も忘れて彼にしがみついた…
凍えそうな寒さの中、心と体に彼の残り香をつけたまま私は母の顔に戻る為、帰り路を急いだ…
あれから三年…
まるで普通の恋人同士の様に二人の時間を過ごした…
何度も『帰らないで』
叫びそうになる心を隠して…
彼はどうだったのかな…
私の様に心に鬼が住んでたかな…
お互いに未来については一言も触れないそんな恋でした…
初めて男に溺れました…
初めて人を憎みました…
『どうしたの?』
『何が…?』
『何か今日のお前暗くない?気のせいだったらいいけど…』
『普通だよ…心配しないで』
黙る彼…
静かに微笑む私…
『別れないから…何があっても別れないから…』
そんな普通の恋人同士みたいな台詞吐かないでよ…
未来なんてないんだよ…
だから何もかも忘れて抱き合えるんだよ…
少しの間だけでも《別れ》を忘れれる様に…
どんなに愛し合ってもどうにもならない壁があるんだから…
どんなに純粋に愛し合っても二人は罪人なんだから…
きつくても辛くても心が壊れそうになっても彼を好きって気持ちの方が強い…
そんな恋でした