秋と春か夏か冬 11話〜『オモイカネ』〜-6
「……雪?」
まだ12月にもなっていない…季節外れの雪だった。
「…はは………美雪を手放した代わりに雪ってか………神様も…ずいぶん嫌味ったらしいな…」
「………それとも…慰めてんのか?余計な…お世話だ……」
1年前に美雪の前で泣いたことを思い出す。
恭介はその場にしゃがみこんだ。
「………痛ぇ。唇噛みすぎて…血ぃ出まくってるし。鉄の味がする………はは………しょっぱい味もするよ。けっこう…頑張ったよな俺…………もう…我慢しなくて…良いよな…」
周りの音を吸い込むように降り積もる雪。
それ以外の何かが、恭介の頬を流れていた…。
――寒い冬と一緒に…この町にやってきた雪。
――他の雪より、一際きれいで…輝いていた雪。
――危なっかしくて…でも透き通るほど純粋な雪。
――俺の心の氷を溶かしてくれた…暖かい雪。
――いつも近くにいた……優しい雪。
――俺の腕のなかにあった……特別な…特別な雪。
――美雪………。
つづく…。