秋と春か夏か冬 11話〜『オモイカネ』〜-2
―――そして週末。
時刻は午前9時40分。
場所は駅前のクリスマスツリーの下…とは言っても、飾り付けされるのはもう少し先だろう…。
待ち合わせは10時。
だが、恭介は20分も前に来ていた。
それから10分後。美雪がやってくる。
「あれ?待ち合わせは10時だよね?……なんでいんの?」
「失礼な。たまには俺が早くても良いだろ」
「寝坊グセのある恭介が私より前に来るなんて……雪が降るかもね♪
そもそも、なんで今日は駅で待ち合わせなの?…いつもは私が起こしに行くのに…」
「うるせー!ちゃんと待ち合わせした方が…新鮮だろ?」
「あはは♪そうだね…じゃぁ行こっ♪」
「あぁ」
俺たちは遊んだ。映画にカラオケ、喫茶店でお茶したり…買い物したり。
「ね、恭介。アレ…ちゃんと持ってる?」
「アレ………あぁ、ちゃんとつけてるよ」
そう言って恭介はポケットから鍵を取り出す。
「えらい!わたしもつけてるよ〜♪」
そう言って美雪も鍵を取り出す。
恭介の鍵には、白い雪の結晶の綺麗なキーホルダーがついている。
美雪の鍵にも、秋を示す、真っ赤な紅葉の形をしたキーホルダーがついていた。
「なぁ…いっつも思うんだけど……逆じゃね?」
「これで良いの。恭介は私の、私は恭介を示す物を持っとくことに意味があるのさ♪♪」
「…そーゆーもんか?」
「そーゆーもんなの♪私たちが付き合ってる限り…ちゃんと身に付けてるんだぞ?」
ズキッ
「……あぁ。じゃぁそろそろ飯にすっか!どっか食って帰ろう。奢るぞ」
「おっ♪恭介、太っ腹だねぇ」
そういって歩きだす恭介と美雪。
楽しい時間。
とてもとても楽しい二人の時間。
でも…どんなに長く、楽しい時間にも…必ず終わりがやってくる。
二人の時間にも…終わりが近づいてる。
近づけているのは…恭介自身…。
自分で選んだはずの道なのに……終わるときには……ひどく胸が痛む…。