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冬空
【大人 恋愛小説】

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冬空〜第一章〜-1

外を見た…
辺り一面真っ白で空から
ヒラヒラ小さな妖精達楽しそうに踊っていた…

不意に鞄の中で眠っていた携帯が鳴った…
彼からだった…

『外見ろよ。雪が降ってるぞ…』
彼は子供の様にはしゃぎながら嬉しそうに言う…
『本当だね…』
私は何年か前の彼との出会いを思い出す…

そう…彼と出会ったのは雪の日だった…
私が住んでる地方は雪はたまに降るけど余り積もらない…
あの日は特別大雪と言ってもおかしくない位の降り方だった…

『すいません…ここら辺に花いちもんめって喫茶店知りませんか?』
私はどうせ昼過ぎには止むときめ込んで傘を持って来てなくて仕事の帰り電車から降りて少し歩いてみたものの余りに激しい雪に足を取られそうで潰れた電気店の軒下で震えながら佇んでいた…
どうしようか…途方にくれてた私はいきなり雪の中から声がしてびっくりして小さな悲鳴をあげた…
『ごめん…脅かすつもりじゃなかったんだけど…』
睨みつけた私を慰めるように彼は満面の笑みで私に話しかける…
『いえ…ボーとしてたんでびっくりしただけで…』
私は恥ずかしさもあり少し気弱に答えた…
『その喫茶店は煉瓦作りでしょう?ここを真っ直ぐ行って信号を右に曲がった所にありますよ』
『ありがとう…もし迷惑でないならコーヒーをご馳走させて下さい』
満面の笑みで彼は言う…
私はというと体は冷えてカタカタ歯がなる位寒かったので即座に
『じゃぁ…案内します…』そう言って彼の傘に入れてもらった…
出会ってはいけなかった私と彼の出会いだった…

『主人と別れて下さい…』いきなり見た事ない番号からかかってきた電話に出ると彼の奥さんだった…
あっドラマみたいだ…私は文句で一杯の奥さんの言葉を他人事の様に黙って聞いてた…
悲劇のヒロインを気取るつもりもないし…
ただ私が心配したのは私の子供達の事だった…
『何をおっしゃっているのかわかりません』
か細い声で答えた…
それが又彼女の怒りに触れたみたいで…
段々口調が荒くなっていった…
私は聞いてる様な聞いてない様な受け答えをしてた…別に悪気があった訳でもなくて…
とうとうきたか…
そんな気持ちだった…

ひとしきり文句を言われて電話が切れた…
ガシャンって切れた音が以上に耳に響いた…
私は心配そうに隣で見つめるまだ幼い子供を抱いて
『大丈夫だから…お母さんは大丈夫だから…』
そう呟いた…
頬を伝わる涙も拭かずに…


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