秋と春か夏か冬 10話〜『誰がための幸せ』〜-8
「お久しぶりです。杏子さん」
「おぉ理緒くん久しぶり。あいかわらず可愛いなぁ♪」
そう言って理緒を抱きしめる杏子。
「おぃ…良かったなぁ恭介。理緒くんのおかげで、嘘が本当になって。嘘のままならお前の寿命が減ってたぞ」
……バレてる。
「ところでさっきの話、どうするんだ…外国へ行かせるのか?引き止めるのか?」
杏子が聞いてくる。理緒も聞いてくる。
「…外国?どーゆーことですか?」
「実は………」
こうなった以上…いや、理緒にも知っておいてもらいたい。
杏子にした説明と同じ説明をした。
「なるほど…」
「だから恭介はどーすんのかって聞いてんだ」
杏子が焦れったいのか、急かすように聞く。
「……俺は…」
俺はどうしたいんだ?
もちろん美雪とは…一緒にいたい。
でも本当にそれで良いのか?
でも母親のところに行くのが夢だって…あいつだって行きたいはずだ。
色々な事が頭の中を駆け巡る。
杏子がため息をつき、恭介に話しかけてきた。
「恋愛…家族…勉強……人生には色々な事がある。でも…人生に答えなんてないんだぞ」
言葉を区切り、杏子は続ける。
「恭介…あんたたちは子供の割にちゃんとした考えを持ってる。でも子供だからって理由で、選択肢が少ないのもまた事実だ。
どれが正しいかは人によって違う。正解なんてない……だがお前が悩んで悩んで出した答えなら、それがお前たちにとって1番正しい道だと思うぞ。
矛盾しているが…人生とはそーゆーものだ」
「さすが杏子さん。深いですね♪僕もその通りだと思いますよ。
もし借りにその選択をあとで後悔しても、それは決して間違いじゃないです。
いま、この時の恭介は正しい道だと思ったんですから、それで良いんですよ」
「理緒くんは賢いのぉ♪♪そうだ!それが人生だぞ。そうやって人は成長していくんだ」
……こいつらは…妙に悟りを開きやがって…。
俺はお前らほど起用じゃねぇよ…。
……でも…なんとなく…わかった気がする。