秋と春か夏か冬 10話〜『誰がための幸せ』〜-3
「間違った。かわいい愛しの彼女が起こしてくれるから大丈夫だ」
とたんに真っ赤になる美雪……恥ずかしいんなら言わせるな。
「…あんたよく恥ずかしいセリフをさらっと言えるわね」
呆れながら見る鈴音。
「くす♪それなら安心ですね」
笑いながら眺める理緒。
「これで遅刻したらバカらしいし早く行きましょ。さっさと食べなさいよ」
「わかってるよ。でも朝からハードな物で胃が…」
「…ぐす。ひどい…アッキーってば…わたしが一生懸命作ったのに…」
「ぐぁー!冗談だ!こんぐらい余裕余裕!」
「ホント?よかった♪おかわりもあるけど食べる??」
「……勘弁してください」
―――それから数ヵ月後の11月。
美雪がこの町に来て1年が過ぎようとしていた。
恭介たちは中3の受験シーズンを迎える。
「ねぇねぇ。恭介は……高校どこ行くの?」
「ん?なんだよ…朝っぱらから。まぁ理緒たちと同じ高校行くだろうなぁ…今の成績ならなんとかなるだろうし」
「そっか…そうだよね」
「お前も同じ高校来るんじゃないのか?」
「…うん。たぶん…ね」
(変だな……歯切れの悪い美雪なんて……)
「…??まぁいいや。じゃぁまた後でな」
ガラッ
「失礼します」
恭介は昼休みに、出し忘れたレポートを提出しに職員室に来ていた。
「これ…出し忘れてたレポート」
「おっ……ふむふむ。よし、ごくろうさん。最近は昔みたいに落ち着いてきたし、先生も一安心だ」
(放っといた癖によく言うよ……まぁ干渉されたくもなかったけど)
「そぉすか。じゃぁこれで失礼します」
心の中で悪態つきつつも、無難な返答をする恭介。
「おっ、そうだ秋津。おまえ…冬白と随分親しい関係らしいな?」
「……それが何か?」
事実とは言え、教師に私事を言われてムッとくる。