秋と春か夏か冬 09話〜『大切なもの』〜-1
美雪と出会った次の日の学校。
(次の授業…サボるか)
そう思い、休み時間に教室を出て保健室に向かう。
その時――
「アッキー!」
この呼び方は…
「聞いて聞いてー!さっきねぇ…うわっ」
走ってきて転びそうになる美雪を支える。
昨日わかったことだが、こいつは危なっかしい。
今みたいに何もない所で転びそうになるのは当たり前。
物忘れが激しいのか言うことを忘れることも多い。
あげくのはてに方向音痴ときた。
(こいつの前で泣いた俺って…)
だがこの3つのことを補えるほど勘が良い。
…俺のことだけに。
まさに野生動物である。
「またつまずいちゃった。ありがとねアッキー♪」
「はいはい……で、どうしたんですか冬白さん」
「…むぅ。私の美雪って可愛い名前が泣いてるよー?」
むくれる美雪。
…アッキーと呼ぶな。
「僕の恭介ってカッコイイ名前も怒ってますが?」
両者ひかない。
「なにやってんのよ二人とも」
「美雪さんの言った通りですね…」
「理緒!鈴!……久しぶり…」
「ホントですよ…僕たちが来ないと恭介からは会いに来ないですし」
苦笑いする理緒。
「まったくよ。あなたのせいで理緒くんが寂しがってるのよバカ!少しは足りない頭で考えなさい」
なんだか鈴の辛口も久々に聞いた気がする。
少し目を閉じ深呼吸する。
(…もう大丈夫だ)
これからは――
「理緒、鈴。今まで悪かったな…これからは俺からも会いに行くよ」
そう言って笑ってみせる。
理緒は驚き鈴音は泣きそうになるが、二人とも笑ってくれる。