秋と春か夏か冬 09話〜『大切なもの』〜-6
「…なぁ、聞いても良いか?」
「ん?なにかな?この美雪様が答えてさしあげよう♪」
「お前と出会えて俺は変わった。いや…元に戻れたと思う……事故のこともバスケのことも話したよな?
あの時は聞いてくれるだけで良いって言ったけど、お前は……美雪はどう思ったんだ?」
あの時はまだ聞けなかった。自分を否定されたくなくて……。
でもいまなら……
「アッキ……恭介は自分で変わったとか戻れたとか言うけどさぁ、私からしてみれば恭介自身…なぁんにも変わってないよ♪優しい恭介のまま。
理緒っちと鈴りんを遠ざけたのも恭介の優しさ……わたしを助けてくれたのも恭介の優しさ……出会った時もこれまでも、これからも…恭介は恭介で優しいヤツだ」
そう言ってニカッと笑う美雪。
「バスケのことは私なんかがわからないくらい辛い辛い出来事だったんだと思う…本当にバスケが大切なものだったんだよね」
「でも頑張った恭介がいるからバスケが大切になったんでしょ?バスケが出来なくなっても…頑張った恭介がいなくなるわけじゃないよ♪♪
バスケをすごく大切に出来た恭介だから、今度は別の大切なものが必ず手に入るよ。なぜなら…恭介はやっぱり恭介だから♪♪」
…こいつはホントに…すごいやつだな…。
―――美雪
お前と出会えて…本当に…良かった―――
俺は美雪を抱きしめる。
「…相変わらず核心ばっかつくよな」
「うん♪」
「…たまにだけど意外と良いこと言うしな」
「たまには余計♪」
「…大切なもの……手に入るかな」
「うん!」
いや…もうすでに手に入れてたんだ…。
俺の腕の中にある…大切なもの…。
「…今から恥ずかしいこと言うけど…笑うなよ?」
「うん♪」
「俺にとって…バスケの変わりになるものはない。
これからもないし、きっと見つからないと思う。
でも…それ以上に大切なものに出会えた……半年前に。俺にとって今1番大切なもの……それは美雪…お前だ。お前と出会えて本当に良かった」
「くすくす♪♪♪」
「……笑ったろお前…」
「嬉しくて笑っちゃったんだよ♪」
「ったく……なぁ美雪」
「うん?」
「…半年前の3つの借り…憶えてるか?2つめの『友達になってくれたこと』って…あれ変更させてくれ」
「うん♪なにが良いかな?」
「『恋人になってくれたこと』って…さ。名案じゃね?」
「うん♪名案だね♪♪決まりだ」
「なぁ美雪」
「ん?」
「…さんきゅ」
「お礼を言う恭介って新鮮だね♪」
「…うるせー」