秋と春か夏か冬 09話〜『大切なもの』〜-5
「ごちそうさん。1つづつは大変おいしかった」
少し嫌味を入れる。
「??変な誉め方するなぁアッキーは」
気付いてない美雪。
「で、どこ行く?」
こいつの会話に付き合っていては日が暮れる。
遊ぶ予定だったが具体的な場所を決めてない。
「見たい映画があるんだ!早く行こ!」
食後にゆっくりも出来ず、美雪にせかされて家を出た。
映画はありきたりな恋愛ものだった。
――付き合ってないんですか?――
ふいに昨日の理緒の言葉が頭に浮かぶ。
「…介……恭介!ボーッとしてる…もう映画終わったよ?」
覗きこんでくる美雪。
「あ…あぁ//」
映画のせいか理緒の言葉のせいか…美雪を意識して紅くなる。
(てか外見だけ見れば、すごい綺麗なんだよな…)
中身は掴みどころがなさすぎだが。
「もぉ…恭介がちんたら起きたせいで真っ暗だよ。今日はこれで帰宅かなぁ」
むくれる美雪にドキッっとしてしまう。
(理緒のせいで普段通りに出来ねぇ…)
そして帰り道。
「うぅ〜寒い〜。もぉ春になるってのに寒いよ〜恭介、なんとかして!」
「…無茶言うな」
「恭介なら出来る!」
「何を根拠に…。さすがの俺でも天候ばかりは何もできん。ほら」
自分がしてたマフラーを美雪にかける。
「…へへ♪♪…恭介ってさぁ…意外と優しいんだよね。出会った時も助けてくれたし、今日のご飯も文句言うけど…残さず食べてくれた。意外と優しくて意外と律儀なヤツだ♪」
「意外意外って…お前は意外と失礼なヤツだよな」
「失礼ってのは恭介のためにある言葉だから、私には適用されないのだ♪」
そう言って笑う2人。