秋と春か夏か冬 09話〜『大切なもの』〜-3
「ゲホッ、ゲホッ…悪い。あまりにも突然だったもんで」
「で、どうなんです?」
「…いや…てか付き合ってないんだけど」
「えっ、付き合ってないんですか?」
「あぁ、考えたこともなかった」
そう…恭介はホントに考えたことなかった。
普段言葉に出さないが、美雪には本当に感謝している恭介。
だが今の日常生活が続けば良いと思っていた恭介は、そんなこと考える発想がなかったのだ。
「明日の休日も二人で出掛けるんですよね?」
「あぁ。理緒が鈴音とデートだからな」
「先週も先々週も、そのまた前の休日も遊びに行ってませんでした?」
「あぁ。先週も先々週も、そのまた前の休日も、理緒が鈴音とデートって言ってたからな」
「………」
なにも言えない理緒。
(僕のせいって言われてる気が…)
「邪魔したら鈴に殺されそうだし。それに…事故以来、俺に遠慮して楽しく遊べなかったろ?気にするなって。美雪と遊ぶのも楽しいし」
(……はぁ。)
ため息をつくしかない理緒だった。
――翌日
暖かくなってきたとはいえ、布団から出るのが辛い。
二度寝する恭介。
(ん…何か聞こえる…)
「…ろ……きろ………起きろー!!!!」
いきなり耳元で怒鳴られ起き上がる。
「な、なんだ?……美雪?……なぜ勝手に家に入ってこれる?」
「この前、パパさんから合鍵もらったの♪『これで愚息を起こしてやってくれ』って。いつでも入ってきて良いってさ♪」
あんのクソ親父……。
合鍵なんて勝手に渡すな……。
「いやいや……タチの悪い夢だなぁ。起きたと思ったらまだ夢だなんて…じゃっ、おやすみ♪」
また布団に潜る恭介。
「こらー!現実だよ現実。それに出かけるんでしょ?」
「出かけるって言っても午後からだろ?まだ11時だ」
「もう11時。それに…ご飯冷めちゃう…」
悲しそうな声の美雪。
やめろその声は!