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この愛情の伝え方
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この愛情の伝え方-1

「おかえり」
彼は穏やかに笑う。
散々酷い言葉を浴びせられて、筋違いの我が儘を押し付けられて、それでも私を受け入れる。
私はそれが嬉しくて、少しだけ悔しい。
ケンカの後、私はいつも彼の部屋を飛び出して、一人走り回って、結局ココに帰る。
彼におかえりと言われるたび、その深い愛情を実感するのと同時に、おまえにはココしかないんだよ、って言われている気分になる。
それがまた紛れも無い事実だから、私はさらに苛立つ。
だから、ただいまは返さない。
「コートも着ないで、寒くなかった?」
背中に彼の温もり。
後ろから私を抱きしめた彼は、大きな手で私の冷えた手を包む。
「なんで怒らないの」
「チイはどうして怒るの?」
彼の囁きが右耳を掠めて、体温が一度上がった。
頑なな心が溶かされて、本音が零れるのを抑えられない。
「好きだからだよ」
泣きそうな声が出て、からかわれてしまう、と手を離す。
けれど、すぐにまた彼の手に捕まって、私は観念して全身の力を抜いた。
「好きだから」
振り返ると彼の匂いが濃くなって、思わず眩暈を起こしそうになっているうちに唇同士が重なっていた。
悔しいくらい、大好き。
「俺も、好きだから怒らないんだよ」
「そんなの、変」
「そういう人間もいるの」
横抱きされて、ベットへと運ばれる。
そうなのかな。
好きなら好きなほど、些細なことで怒ったり、傷付いたり、嫉妬したりするものなんじゃないのかな。
「ヒロの気持ちは伝わってくるけど、なんか納得いかないっていうか、なんか腹立たしいというか、やっぱり私の方が惚れているというか…」
「俺の方が惚れてるでしょう」
ベットに私を下ろすその手つきは、確かに労りや気遣いで溢れているけれど。
「何でも許せちゃうくらい、惚れてるんだよ」
「うーん…」
「俺がチイみたいなタイプじゃなくて良かったと思うけどなぁ」
啄むようなキスを落とし、彼はいつもの穏やかな笑みを作った。
「俺が許さないことで愛情を伝える人間なら、チイは既にこの世にいないよ」
その表情と同じ穏やかな口調で、彼はどびきり猟奇的な台詞を囁く。
だけど、やっぱりその方が素敵な気がしてしまった私は、どうしようもなく彼に囚われている。


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