初夜〜The later story-5
「今、俺がいる事カンペキ忘れてただろ」
「え?」
「俺の事なんか見もしないで外の景色に夢中になって」
「あ…」
「せっかく看病してやったのに、俺の苦労も甲斐なしだな」
「ご、ごめん…」
やだ。わたしってば…。
またやっちゃったんだ…。
だけど気づいた時には、もう遅くて…。わたしはとっさに俯く。
するとそんなわたしを見て、秋くんはフッと笑った。
「なんてね、うそ」
そう言って、秋くんは意地悪く舌を出してみせたかと思うと、わたしの額に自分の額をコツンと当てた。
「夜景を見てたお前に…ほんとは見とれてた」
いつになく真剣な秋くんの眼差しに、大きく揺れるわたしの心。
まるで魔法が掛かったように、視線も剥がせない。
「藍…」
少しの沈黙の後、秋くんの手がわたしの頬へ触れた。
そしてそのまま、彼の唇が近付いてくる。
「ん、んんっ…」
秋くんの腕の力が強くなると同時に、キスが深くなる。
二人の乗る観覧車が小さく揺れた。