初夜〜The later story-10
「…信じらんない。観覧車の中でするなんて」
「でも、よかっただろ?」
「バカ!」
頂上を通り越し、あとは下へおりるだけの観覧車。
ほとんど地上に近い外の景色を見つめながら、わたしは一人ブツブツと愚痴を洩らす。
「許して?」
「……」
すぐには答えない。
だって本当はわたし、秋くんと手を繋ぎながら、外の夜景を見ていたかったんだもん…。
「それなら、どうすれば機嫌なおしてくれる?」
「……」
明らかにいじけているわたしを見て、秋くんが困った顔を向けてくる。
しばしの沈黙。
すると、しばらくしてわたしは顔をあげた。
「もう一回…キスして…」
わたしは小さくそう呟くと、目の前にいる秋くんをジッと見つめた。
魅せられる、その真っ直ぐな瞳。
そのまま吸い寄せられるように、わたしは瞬きする事さえ出来ない。
そしてもうすぐで地上へ届く、二人の乗る観覧車。
「…キスすれば機嫌直してくれる?」
しばらくして秋くんがわたしに尋ねた。
彼の言葉に、わたしはそっと頷き返す。
「……」
言葉を消して、静かに見つめ合う二人。
薄暗い観覧車の中を、地上から見える色とりどりのライトが照らす。
そのまま肩に秋くんが腕を回してきて、わたしは静かに目を閉じた。