いのち短し、××せよ少女!-2
(あと二十五分、か)
眠気は覚めてしまったけれど、授業に出る気にはなれない。
寝起きで身体が起きてくれそうにない。
(んー、保健室のベッドって気持ちいい)
何でだろう、スプリングのないベッドは硬いくせに妙に寝心地がいい。
(あ、保健室っていえば)
三ツ木に行った奈津美――保健室で先輩とヤッちゃったって言ってたっけ。
(いーなぁ、一回でいいからこのベッドでやってみたいなぁ……あいつ呼び出そっかな)
まだ人の多く残る学校、しかも保健室でヤるなんて、背徳感も手伝って相当感じそうだ。
(あ、ヤバい。ムラムラしてきた)
そっと自分の手を太腿の内側に沿わせる。
手のひらの冷たさと快感に、ぞくりと背筋を何かが駆け抜ける。
そのまま手をゆっくり上へ移動させ、ショーツの中に滑り込ませる。
いけないとは思いつつも、此処まで来たら止まらない。
ショーツを下げるとスカートの感触が直にお尻に伝わってぞくっとする。
「はぁ……ん……」
あたしは小さく喘いで、さらにその手を奥へ進めようとした――その瞬間。
がら、とドアを開ける音。
「……ッ!!」
本当に、心臓が飛び出るかと思った。
あたしはさっとシーツを頭から被り、ドキドキと激しく鼓動する胸をぎゅっと掴んで息を殺す。
「先生? ……いないんですか?」
男子生徒の声。
(げ、よりによって男)
無論、あたしのこの状況など相手が知るよしもなく。
足音が段々とベッドの方へ近づいて来る。
あたしの胸の鼓動は段々に速くなる。
「あの」
「!!」
「先生どこに行ったか知ってますか?」
話しかけないで、なんて言えない。
あたしはシーツを頭から被ったまま、できるだけ気分の優れなさそうな様子を装って答える。
「先生は、怪我しちゃった子の付き添いで……ごほごほ」
「あ、すみません。気分悪いんですよね」
相手がすまなそうに言う。
こちらこそ、仮病でごめんね。
ごめんなさいと繰り返す彼が少しだけ気の毒になって、あたしはちらりとその男子生徒の顔を見やる。
(お、ちょっと格好いい)
些か優男っぽい美少年がそこにいた。
そして、あたしはその美少年とはたと目が合ってしまう。
「大丈夫ですか? 顔、赤いですけど……」
心配そうに言ってくれるのは嬉しいけど、別に熱があって赤いわけじゃないんです。
大丈夫大丈夫、と相手に伝わるようオーバーに頷いて見せる。
「そうですか、お大事に」
彼は優しげな笑みを浮かべて軽く会釈する。
一年生かな、可愛いな。しかも優しいし。
あたしがこんなところでひとりエッチしてるなんて知ったら、卒倒しちゃうだろうな。
そして彼はもう一度ぺこりと頭を下げると、保健室から去って行った。
ドアを開ける音と遠のいて行く足音。
耳を澄ませてそれを確認して、あたしはようやっと安堵に胸を撫で下ろす。
(うああ、心臓に悪い)
そして彼が本当にいなくなったかどうか、そろーっとベッドから抜け出して保健室の入り口を見やり――