「もう一度、付き合いたい」-2
駅前で、誰にも分からないように泣いた。
今でも変わらず好きだと気付く。
でも、変な意地や、追い掛ける気力の無さ、また拒絶される恐怖、いろいろな感情が混じって、素直に好きとは言えない。
まだ結婚できるほど大人じゃないし、自立していない。
でも、全力で愛していた。
自分のすべてで守ってやると思っていた。
失恋なんて、長い人生何回でも経験するって自分に言い聞かせたけれど、
失恋して自殺する人だっているということも知ってる。
友達がカラオケに誘ってくれた。男女混合のカラオケで、可愛い子もいた。
でもつまらなくて、失恋の歌が多いことに改めて気付く。
今なら、普段詩なんて書かない俺も書けるような気がするくらい、失恋って自分の感情の振り子をガンガン揺さ振る。
いろんな感情があって、そのどれもが、喜怒哀楽じゃ表せれない。
電話に手をのばす。
彼女は、でてくれるだろうか。
もう着信履歴にもリダイヤルにも彼女の番号は残っていなくて、別れてから長い時間が経っていたことに気付く。
「もしもし、元気?」
彼女はすぐ出た。
「うん、元気よ。弘毅は?」
「俺も。」
ゆっくり、息を吐いた。
「ごめん、突然」
「もう一度、付き合いたい」
痛かった。
嗚咽が出そうになる。
胸が、押しつぶされそうになって、ただ、ひたすら痛む。
「ありがとう」
彼女はゆっくり、次の言葉を述べる。
俺は、泣かないように、震える手と声を抑えて、あいまいに笑った。